論文紹介
アルツハイマー病患者及びラットにおける記憶に対するホスファチジルセリンの影響
今回は2005年に発表された
(論題)
Effect of phosphatidyleserine on memory in patients and rats with Alzheimer's disease
(論題訳)
アルツハイマー病患者及びラットにおける記憶に対するホスファチジルセリン(PS)の影響
という論文をご紹介いたします。
この研究は
アルツハイマー病(以下AD)罹患患者には、コリン作動性神経伝達物質(*1)を増強する薬は維持管理のためにのみ使われ有効性は不十分であること、治療薬は現在ないがADの症状を遅延・改善させたい
上記の考えから行われました。
*1.コリン作動性神経伝達物質…神経刺激を伝える物質
この実験により
ホスファチジルセリン(PS)の経口摂取は重度の記憶障害を有するAD患者でも電話番号を覚え、誤っていたことを思い出し読書や話・作業中の注意が大幅に改善されることが分かりました。
詳しい内容は以下に記載致しますのでご興味のある方はどうぞご覧くださいませ。
<研究対象者・ラットと施した処置>
・AD患者
対照群(*2):25人→通常のAD治療、血圧血糖コントロール
観察群:32人→上記+ホスファチジルセリン(以下PS)300mg 1回/日を20週間経口投与
*2.対照群…処理を加える観察群と比較するための対照群(この場合PSを投与しない群)
・ADラット
高PS投与群:30mg/kg
低PS投与群:15mg/kg
対照群:PSの代わりに蒸留水
<処置前後の変化の確認方法>
・AD患者
語彙・画像マッチングスコアの確認
・ADラット
モリス水迷路試験(*3)・脳内のSOD(*4)活性
ヒドロキシラジカル(*5)阻害率・ChE(*6)レベル検出
*3.モリス水迷路…一箇所だけ浅くなっている水槽に不透明な水を入れラットをそこに泳がせる。
繰り返すことで周りの景色から浅瀬の位置を記憶し浅瀬へ到達する時間が短くなっていく。
*4.SOD…活性酸素を除去する抗酸化物質(多いと良い)
*5.ヒドロキシラジカル…OH。酸化物質(多いと良くない)
*6.ChE(コリンエステラーゼ)…神経伝達物質のAch(アセチルコリン)を分解(多いと良くない)
<AD発症のメカニズムと改善>
酸化物質により損傷された脳細胞が過酸化すること・それによる明らかな炎症反応・
アセチルコリンの増加に関連するのは明らかと言われている。
その為酸化物質を減らす・アセチルコリンを分解してしまうChEを減らす・
SOD等抗酸化物質を増やしてあげる事が改善につながる。
<結果>
PSの経口投与でAD患者では記憶機能等の明らかな改善が認められた。
人では確認できない為、ADラットで組織等を調べた結果上記で述べた改善方法のChEの減少・SOD(抗酸化物質)が増加しヒドロキシルラジカル(活性酸素)の抑制速度が改善され海馬(*7)の炎症の改善が認められた。
*7.海馬…長期記憶の形成に関係している脳の部分。ADの際海馬の萎縮が確認される。
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