論文紹介
膵臓がんにおけるDHAの抗腫瘍機序
今回は2017年3月にJOURNAL OF CANCER PREVENTIONに掲載された
(論題)
Anti-cancer Mechanism of Docosahexaenoic Acid in Pancreatic Carcinogenesis:A Mini-review
(論題訳)
膵臓がんにおける(ドコサヘキサエン酸)DHAの抗腫瘍機序
というレビュー論文をご紹介いたします。
これまでの疫学的研究ではオメガ3脂肪酸の高い消費は膵臓がんのリスクを低下させること、食餌性魚油の補給は動物モデルにおける膵臓がん発生を抑制すること、DHAは抗腫瘍活性を示すこと、等が示唆されていました。
この論文の結論として
DHAは膵臓がん細胞においてアポトーシス(*1)を誘導することやDHAは血管新生(*2)促進因子の発現を抑制し、がん細胞の増殖を防止することがわかりました。
これらからDHAが豊富に含まれている食物の補給は膵臓がんの発症を予防する可能性があることが分かりました。
*1. アポトーシス…プログラムされた細胞死。
*2. 血管新生…新しい血管が作られること。血管がないと酸素や栄養が足りなく腫瘍は一定以上のサイズにはなりませんが血管新生をすることでそれらを補い増殖、浸潤、転移を起こします。
詳しい内容は以下に記載致しますのでご興味のある方はどうぞご覧くださいませ。
<オメガ3脂肪酸(EPA/DHA)とは>
オメガ3脂肪酸(EPA/DHA) は、消費者庁がサプリメント11品目を評価した結果唯一 A評価を受け、その効果についての科学的根拠を有することが認められています。
これは平成24年4月に「食品の機能性評価モデル事業」という題で消費者庁より公表された全81ページにも及ぶ報告書です。
心血管疾患リスク低減、血中中性脂肪低下作用、関節炎や関節痛の代表として関節リウマチ症状緩和に対してA評価を与えました。
そして、現在はオメガ3脂肪酸の DPA ETA などの研究結果が続々と精度の高い論文として発表され、 EPA DHAと同様もしくはそれ以上の機能を発揮することが明かされています。
<これまでのオメガ3脂肪酸の研究>
◎オメガ3脂肪酸の高い消費が膵臓がんのリスクを低下させると示唆。
◎食餌性魚油の補給は動物モデルにおける膵臓がんの発症を抑制することが示唆。
◎DHAは抗腫瘍活性を示す。
上述のことが様々な研究より証明されてきました。既にDHA・EPAが結腸、乳房、前立腺がんにおける腫瘍脈管形成を阻害し治療に役立つ可能をゆうすることもわかっています。
また人の肝臓がん細胞、胃がん細胞でアポトーシス(*3)を起こす事も確認されています。
*3.アポトーシス…プログラムされた細胞死
<膵臓がんとは>
遺伝的な要因がかなり大きい。
膵臓がん細胞はアポトーシスに対する耐性を示すので=治療に対する耐性となり進行が促進する。
局所浸潤と転移のリスクが高いため長期生存率が低くなる。
腫瘍の増殖は血管新生(*2)に依存する。
<実験方法>
オメガ6脂肪酸とオメガ3脂肪酸をオメガ3多価不飽和脂肪酸(*4)に変換可能なマウスと、変換のできないマウスを観察。
その後
それらのマウスでオメガ3多価不飽和脂肪酸が膵臓上皮内新生物(PanIN)に及ぼす影響とそれが膵管腺癌(PDAC)へ進行する影響を確認した。
<結果>
他の脂肪酸をオメガ3多価不飽和脂肪酸に変換可能なマウスは変換ができないマウスに比べ
オメガ3多価不飽和脂肪酸濃度がはるかに高く、
膵癌腺癌(PDAC)の発生率が劇的に減少し、
癌腫や膵臓上皮内新生物(PanIN)などの病変を有する膵管が激減 した。
更に…
DHAとEPAは膵臓がん細胞の増殖を阻害しアポトーシスを誘導する
DHAは炎症誘発物質の産生を阻害することにより浸潤を抑える
DHA・EPAは強力な抗血管新生作用を有する ことが確認された。
<結論>
DHAは膵臓がん細胞においてアポトーシスを誘導する。
DHAは血管新生促進因子の発言を抑制し、がん細胞の増殖を防止する。
つまり、DHAが豊富に含まれる食物の補給は膵臓がんの発症の予防や治療に役立つ可能性が十分にあることがわかった。
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