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論文紹介

犬の腫瘍細胞の増殖及び死に対する分岐鎖アミノ酸の影響

今回は2006年に発表された


(論題)
The effect of Branched-Chain Amino Acids on Canine Neoplastic Cell Proliferationm and Death
(論題訳)
犬の新生物(腫瘍)細胞の増殖及び死に対する分岐鎖アミノ酸の影響

という論文をご紹介いたします。



この研究は
これまでの研究で悪液質(*1)など筋萎縮のモデルにおいて分岐鎖アミノ酸(以下BCAA)が除脂肪体重(筋肉量)を保存するのに役立つと示唆されていました。
なので医師はがん性悪液質で体重維持の為BCAAの使用を提唱することがあるが、その際BCAAが腫瘍細胞に対してどのように影響するのかが大切になる。
との考えから行われました。

*1.悪液質…基礎疾患に関連して生ずる複合的代謝異常の略。脂肪量の減少の有無にかかわらず筋肉量の減少を特徴とする。
悪性腫瘍や白血病等でよく認められる。



この実験により
ロイシン・イソロイシン・バリン・アルギニンを使用した細胞3株(犬骨肉腫細胞、犬気管支肺胞がん細胞、犬腎尿細管上皮細胞)全てにおいて抗増殖作用が認められた。
アルギニンとロイシンにおいて骨肉腫細胞と犬腎尿細管上皮細胞の顕著なアポトーシス(*2)の誘導が認められた。
ロイシンのみ骨肉腫細胞の細胞周期(*3)のG2M期の喪失を示し多くの骨肉腫細胞がS期に停止をした。
ことが分かりました。

*2.アポトーシスプログラムされた細胞死。
*3.細胞周期…G0期(静止期間)→G1期(DNA合成準備期間)→S期(DNA合成期間)→G2期(分裂準備期間)→M期(有糸分裂期間)→G0期(静止期間)に戻る。

上記の結果を表にまとめたものがこちらです。

抗増殖作用
アポトーシス
細胞周期
ロイシンすべて抑制(10mmol/L)骨肉腫G2M期排除(S期で停止)
イソロイシンすべて抑制(100mmol/L)
バリンすべて抑制(100mmol/L)
アルギニンすべて抑制(50mmol/L)骨肉腫・MDCK





詳しい内容は以下に記載致しますのでご興味のある方はどうぞご覧くださいませ。



<使用するアミノ酸・細胞>

●細胞
   犬骨肉腫細胞
   犬気管支肺胞がん細胞
   犬腎尿細管上皮細胞(MDCK)

●アミノ酸
   アルギニン
   BCAA
             →ロイシン
             →イソロイシン
             →バリン

※アルギニンはBCAAではないが、これまで腫瘍細胞を使用した研究で最も集中的に研究されてきたアミノ酸であるため補助的にアルギニンも使用し同様の実験を行った


<試験内容>

1.細胞崩壊
     犬骨肉腫細胞・犬気管支肺胞がん細胞・犬腎尿細管上皮細胞(MDCK)において、それぞれのアミノ酸による増殖抑制効果を調べる。

2.アポトーシス(*2)
  犬骨肉腫細胞・犬気管支肺胞がん細胞・犬腎尿細管上皮細胞(MDCK)において、それぞれのアミノ酸によるアポトーシスの対する影響を調べる。

3.フローサイトメトリー(*5)
  犬骨肉腫細胞・犬気管支肺胞がん細胞・犬腎尿細管上皮細胞(MDCK)において、それぞれのアミノ酸による細胞の増殖や周期などに与える影響を調べる。

*5.フローサイトメトリー……試料中の細胞の数や生存する細胞の割合、起きさや形状等を測定する手法。短時間で多量の細胞数やその特徴を計測することが可能。



<結果>


1.細胞崩壊
  ●有効なアミノ酸
     すべてのアミノ酸(ロイシン・イソロイシン・バリン・アルギニン)

  ●抗増殖作用が認められた細胞
     すべての細胞(骨肉腫細胞・気管支肺胞がん細胞・MDCK細胞)

  ●強さ
     ロイシン > アルギニン >イソロイシン・バリン

2.アポトーシス
  ●有効なアミノ酸
      ロイシン・アルギニン

  ●アポトーシスが認められた細胞
      骨肉腫細胞・MDCK細胞(アルギニンのみ)

  ●強さ
      アルギニン > ロイシン

3.フローサイトメトリー
  ●有効なアミノ酸
      ロイシン

  ●細胞周期の以上が認められた細胞
      骨肉腫細胞(S期で停止・G2 M期が排除)


上記の結果を表にまとめたものがこちらです。

抗増殖作用
アポトーシス
細胞周期
ロイシンすべて抑制(10mmol/L)骨肉腫G2M期排除(S期で停止)
イソロイシンすべて抑制(100mmol/L)
バリンすべて抑制(100mmol/L)
アルギニンすべて抑制(50mmol/L)骨肉腫・MDCK



<結論>

BCAAは腫瘍細胞の増殖を抑制する可能性があることが本研究により示唆された。



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